第二十九話・逃走

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 湯船に浸かりながら準子は迷っていた。脱出の際、千鶴を殺すべきかどうか。人質として使う案もあるにはあるが、そうすると千鶴相手に何度も隙を見せることになってしまう。完全に心が折れている状態だとはいえ、あまり油断しない方が良いだろう。
 かといってこの場に残していくのも微妙なところだった。香沙会の庇護を取り戻し、心身ともに回復したら、千鶴は必ず準子を殺そうとするに違いない。考えるまでもなく明らかなことだ。自身のプライドに賭けてそうするだろうし、また、そうしなければ安心して生きていけないとも思うことだろう。徹底的に責め嬲られた者の心理は、それを経験している準子にもよく理解出来た。
 とはいえ。いかに千鶴が凶悪無慈悲な性格破綻者だとしても、彼女はまだ十六歳の女子高校生なのだ。更正の余地がないと誰が断言できるだろう。
 彼女の目を見れば準子には一目瞭然なのだが、千鶴はまだ人を殺したことがない。それを行ったところで周囲は咎めたりしないだろうし、事が露見して社会的な制裁を受けることも決してないにもかかわらず、である。千鶴にも超えてはいけない一線というものが存在するのだと準子には思えるのだった。
 殺人の経験がないからといっても、千鶴の性格がねじ曲がっているのは今さら確認する必要もないことだろう。曲がっているというより、もつれているといった方が正しいかも知れない。幾重にも絡み合って解けなくなってしまった毛糸並とすら言っても良い。
 殺してしまった方が世の中のためになるのは自明だった。だが彼女のそうした性格は、香沙会会長の孫という特殊な環境が少なからず影響しているはず……。なら、新しい生活を用意してやったら……?
 準子はつい甘い考えに囚われてしまう。相手が未成年だというのが良くなかった。犯罪組織の主犯格が子供であるケースなど、むろん初めてのことだ。なので、他の犯罪者とはどこか違うのではないかという考えが頭をもたげてしまう。幻想に近い勝手な思い込みなのだと分かっていても、千鶴の可愛らしい容姿を思い出すと、そのような思考から抜け出せなくなるのだった。
 それに加えて、千鶴の処遇に迷う理由がもう一つあった。罪悪感。準子の胸の内には、少々やりすぎてしまったかという思いが渦巻いていた。この最上階フロアで二人っきりになり、力関係が逆転してから、千鶴に対してずいぶんと苛烈な責めを行ってきた。今後のことを考えて彼女を精神的に追い詰めるためではあったが、私情が入っていないかというとそうではない。全くそうではない。ハッキリ言って、心底から楽しみながら復讐劇を演出していた。千鶴はとっくに屈服しているというのに、それでも準子は執拗に嬲り続けた。
 ある程度満足して冷静になり、これまで千鶴に行った仕打ちを思い返してみると、自分のことながら驚いてしまう。今さらながら、よくあそこまで酷いことが出来たものだと、準子は自分で自分に引いてしまった。
 準子自身も同等以上の目に遭わされてきたのだから、謝罪する気など毛頭ないし、その必要も全く感じていなかったが、それでも若干の心苦しさを抱かずにはいられない。
 まあ、ともあれ、まだ時間はたっぷりとあることだし、これからゆっくりと考えれば良いことだ。脱出方法についても大まかな見当は付けているが、細かな詰めの作業はまだまだこれからだ。
 準子は浴槽から上がり、タオルを身体に巻き付けてバスルームを出た。

 最上階のほとんどをぶち抜いているプレイルームは、何度見ても呆れるほど広かった。軽くジョギングが出来そうな面積がある。実際、四つん這いの千鶴を数え切れないほど走り回らせてきた。
 その無駄に広いフロアの真ん中で、千鶴は天井から伸びたロープに縛られていた。絞首刑に処せられた死刑囚のように、縄で作った輪っかを首に掛けられている。もちろん、普通に立っていれば首が絞まらないよう高さは調節してある。彼女の首に縄を掛けているのは動きを封じるためである。準子が入浴している間、余計なことを出来ないようにと念のため拘束しておいたのだ。
 しかし……。
 千鶴の様子がおかしかった。準子はバスタオルだけを身に着けた格好のまま千鶴に近付いていった。自然と早足になる。まさかという思いが準子の思考を滞らせた。
 準子がバスルームに入る直前と同じく、千鶴の首にはしっかりと縄が掛かっている。それはいい。厄介なのは、千鶴の足が地に着いていないことだった。正確には爪先が床に接触しているが、体重はほとんど乗っていない。膝が曲がっていることからして明白だった。では彼女の身体を支えている物は何なのかというと、これが大問題であった。千鶴の首に、縄が深々と食い込んでいるのである。どう見ても気道を塞いでしまっている。
 首をこれ以上ないほど絞め付けられていて、苦しくないはずがないのに、彼女は微動だにすることがなかった。白目を剥いて血の気の引いている千鶴の顔を見れば、どういった状態にあるのかは嫌でも理解できた。
 事の重大さを認識すると、準子は慌てて縄を解き、千鶴に心臓マッサージを施した。ついさっきまで殺すかどうか考えていた相手ではあるが、この際そんなことは言っていられない。必死になって胸部を叩いては、唇を重ねて新鮮な空気を送り込む。
 なぜこうなったのかは分かっていた。千鶴にきつい体勢を強いていたわけでない。自分から足の力を抜かない限り、首が締まることはない。
 ようするに、千鶴の精神が究極の意味で限界を迎えたのである。準子には些か意外であった。が、こうやって彼女が自ら死地に逃走を図った事実を前にすれば、納得出来ないこともなかった。千鶴への復讐が始まってからまだ一週間ほどしか経っていない。夏休みが終わるまでのあと一ヶ月も続くかも知れないと思えば、手段を問わず逃げ出したくもなるだろう。
 準子は今し方これまでの容赦ない責めを後悔していたのだが、そんなことは千鶴の知るところではない。皮肉にも準子が心変わりし始めた直後に千鶴は後戻りの出来ない道に入ったことになる。
 もはや助かる見込みはないと思っていても、準子はなかなか切っ掛けを掴めず、心臓マッサージをしばらく続けていた。別に情が移ったわけではないが、ひょっとしたら次の瞬間には息を吹き返すのではないかという淡い期待が頭から離れなかった。

 チン、というエレベーターが到着する音がフロアに響き渡り、準子の全身が硬直した。一週間ぶりに聞く懐かしい音だった。ほとんど反射的に視線を音源に走らせる。
 エレベーターの扉がゆっくりと開いていき、中に銃を持った黒服の男達がいるのが見えた。エレベーター内は人で溢れているようだった。少なく見積もっても十人はいる。
 扉が開き切る前に、準子はバスルームに向かって駆けだした。走っている途中でタオルが落ちるが、気にしている暇はない。
 バスルームには千鶴から奪った拳銃があった。それを手に取ったところでどうすれば良いか分からなくなり、その場に立ち尽くす。そもそもここまで走ってきたのも何か意図があってのことではない。ただ男達のいないところに移動しただけだ。無意識のうちに拳銃を求めていたのかも知れないが、あれだけの数の男を相手に拳銃一つでどうにかなるはずはない。
 こちらから不意打ちを仕掛けて相手を混乱させ、常に先手を取り続けられるのならば話は別だが、正面から撃ち合っても勝負は見えている。準子の射撃能力がどれだけ優れていても無意味だ。彼らの中にも腕に自信のある者は何人かいるだろう。となると後は火力の勝負である。人数比から考えて勝てる見込みなど皆無だった。
 おそらく、男達は準子の姿を目で捕らえていたはずだ。あと数秒でバスルームに踏み込まれるだろう。
 なぜ彼らが千鶴の言い付けを破って最上階に来たのか、準子には分からなかった。ただ、何にしろ千鶴の異変と無関係ではあるまい。銃を構えていたことから考えれば分かる。何らかの方法で異常を察知したのだろう。
 千鶴はそこまで計算していたのかも知れない。今となっては確かめようもないことだが、下の階にいる男達を呼び寄せるために自ら命を絶ったという可能性は、充分にある。
 準子は無念さに歯噛みしたが、男達が近付いてくる足音を耳にしすると、表情を一変させて竦み上がった。悔しがっている場合ではない。この絶体絶命の危機にどのような対処をするか、数秒で決めねばならなかった。
 手にしている銃を放り投げて降参のポーズを取れば、たぶん撃たれることはないだろう。むろんのこと、それは彼らが寛大だからではない。
 殺せばそこで終わりだが、生かしておけば延々と苦しみを与えることが出来る。会長の孫を死に追いやった張本人を、そう簡単には楽にするつもりなどないことは、想像に難くない。
 千鶴のSM調教なんて比較にならないほどの熾烈な拷問が準子を待っていることだろう。女性としての尊厳だとか、人として恥ずかしい姿だとか、そんなことに構うことは一切なく、純粋に痛みという痛みを味わわされることになるのだ。一日と経たずに五体満足ではいられなくなると考えた方がいい。五感もいつまで残してもらえることか。
 手足を無くし、視覚を奪われ、聴覚を喪失して、なおもあらゆる痛覚を刺激される日々……。
 想像しているうちに、いつの間にか準子は拳銃をこめかみに突き付けていた。バスルームに入ってから数秒。下した結論は皮肉にも千鶴と同じであった。
 逃げるのだ。逃げるしかない。この恐ろしい現実から逃走するためには、自らの意志を持って人生の幕を下ろすしかない。
 準子はこれまで数人の凶悪犯を射殺してきた。であっても、当然ながら自分で自分を殺したことはない。この手で自分の命を絶つ難しさは想像以上だった。
 死にたくないという感情がどうしようもなく先にきてしまう。不思議と生きたいという願いはあまり湧いてこなかった。それよりも、死という未知の世界への恐怖心の方がずっと強かった。
 千鶴が会長に嫌われていて、そのおかげで自分は許されるのではないかという、そんな有り得ない展開を望んでしまう。しかしそれは無理な話なのだ。たとえ本当に千鶴の死が望まれていたのだとしても、メンツの問題として、香沙会は準子を拷問死させなければならないのである。どう転んでも決して準子は救われない。
 あと一秒もしないうちに男達はバスルームに乱入してくるだろう。そうなったら終わりだ。腕を撃ち抜かれ、拳銃自殺することも出来なくなる。その前に済ませなくてはならないというのに、指が引きつってしまい、準子は思うように引き金を絞れなかった。
 目を見開きながら何度も銃を撃とうとするが、指に力が入ることはない。
 男達がバスルームに雪崩れ込んできたのとほぼ同時。準子は肩に衝撃を受けてよろめいた。
 撃たれたのだと認識出来るのは数瞬後のことである。その前に準子は男の一人に体当たりを食らわされ、あっという間に組み敷かれてしまった。頭が真っ白になり、悲鳴を上げようとしたところ、口内に布を押し込まれる。
 銃を撃つことも舌を噛むことも出来なくなり、準子はようやく心の底から死を望んだ。今なら躊躇無く引き金を引くことが出来る。だがそれはもはや叶わぬことだった。
 男達によって全身を革ベルトで拘束されていく中、準子は喉の奥を震わせ続けた。



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