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レディースリンチ(目次)



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レディースリンチ 第六話・恥辱の芸


「そんなに舐めたいなら、舐めさせてあげてもいいけどさ。その前に、ちょっと場を盛り上げてもらおうか?」
「え……えっと……」
 そんなことをいきなり言われても何をすればいいか分からない。どうしようかと戸惑っていると、夏姫がとんでもないことを言い出した。
「持ちネタないのぉ? じゃあしょうがないな、そこで立ったままオナニーしてみせなよ」
「そ、そんな……」
「ふうん、嫌なの? 嫌なんだ。ならもういいよ。お前、いらないから」
 私はビクリと振るえて慌てて言った。
「や、やります! オナニーやらせて頂きます!」
「じゃあ、やれば?」
「……は、はい」
 返事をしたものの、人前で自慰をするなんてやはり躊躇ってしまう。夏姫だけじゃなく、バレー部の三人組がすぐ近くで正座したまま見ているし、他のレディース達も距離はあるが遠巻きにこちらを眺めているのだ。
「やるの!? やらないの!? はっきりしろよ春香!」
 戸惑っている私を、夏姫が苛つきながら怒鳴りつけてくる。
 もうやるしかない……。
 私は覚悟を決めて手を股間に持っていった。
 割れ目に触れるが、そこは当然、全く濡れてはいない。どこまでやれば夏姫が許してくれるのか分からないが、もしもイクまでやらなければならないのなら、相当な時間、恥をさらし続けなければならないだろう。
 暗澹とした気持ちになりながら、私はいつも自分の部屋のベッドの上でやっているように、左手でクリトリスを弄くりつつ、右手の指で陰唇をピラピラと撫で回した。
「はうっ」
 遣り慣れているいつもの自慰とは違う感覚に、背中がピクンと弓なりになった。ベッドの中で汗を掻きながら淫欲に耽るのとは違い、股間を冷たい外気に晒しながら弄る感触は新鮮で、電気がピリリと走り抜けるような疼きがする。
「あはっ。さっそく感じてるじゃん。エロエロだねえ、春香は」
「ち、違います。そんなんじゃ、ないです……」
「そんなこと言ってぇ、本当は見られながらするのは気持ち良いんでしょ?」
「うう……」
 言われてみれば、周りの視線を意識するとジワジワ股間が熱くなってくるような気がする。
 陰唇とクリトリスを弄繰り回しているうちに、体の奥からトロリと粘液が流れ出てきて、指がヌルヌル粘ついてくる。滑りがよくなると余計に気持ち良くなり、愛液がますます溢れてきた。
「はあっ……、はああっ……」
 愛液に濡れた肉ビラをヌチョヌチョとこね回しつつ、クリトリスを指先で優しく掻き撫でる。陰部に甘い疼きが膨らんで、思わず「はうんっ」と浅ましい喘ぎ声を漏らしてしまう。
「あははははっ。いいじゃん。面白いよ、春香。でも、ちゃんと指を中まで突っ込みな」
「は、はい」
 夏姫に声を掛けられて、ポウッとした頭に少しだけ冷静さが戻ってきた。
 私、人前でなんてことを……。
 同姓とはいえ何人もの人に見られながら痴態をさらしてしまったことを自覚してしまい、顔が燃えるように熱くなる。
「ほらぁ、さっさと突っ込めよ!」
「うう……わ、分かりました……」
 死にたくなるくらい恥ずかしいけれど止めるわけにはいかない。
 私はプルプルと震える指を膣口に持っていき、溢れている粘液を塗りつけてからゆっくりと沈めた。
 処女を失ってから三日。今は指くらいならそれほど痛くはないけれど、どうしても恐怖感が付きまとう。
 恐る恐る第一関節だけを埋め込み、浅い部分でだけ慎重に指を出し入れする。痛みはほとんどなく、それどころかウズウズと情欲の高まりが湧き上がってくる。
「はあっ……はああっ……」
 もう少し深く指を入れてみたいとすら思えてきた。奥まで入れて思いっきり掻き回せばどんなに気持ち良いだろうか。けどさすがにそこまでしたら痛みがしそうで恐かった。処女喪失の時の激痛は、今も私の心に刻み込まれたままなのだ。
「小学生のオナニーじゃないんだから、もっと奥まで入れなよ! ギャラリーを退屈させるんじゃないよ!」
「は、はいっ」
 夏姫のヤジが後押しになり、私は思い切って指を第一関節よりも先まで沈めていった。第二関節を通過して根元まで挿入しても、心配していた痛みはしない。
 私はホッと息をつきながらゆっくりと指を出し入れし始めた。
 薄白色の恥ずかしい粘液が溢れ返り、クチュクチュと卑猥な音が鳴った。熱を帯びた膣壁はネットリと指に絡みつくように収縮し、ヒクヒクと性刺激に反応する。
「はうっ……ふあんっ、ひああっ」
 たまらない快感に翻弄され、私は腰をクネクネさせて淫猥なダンスを踊ってしまう。
「春香、いい感じだよ。お尻にも指を入れてみなよ」
「はいぃ……」
 腰が砕けそうになっている私に、夏姫はさらなら命令を下した。
 どんなに気持ち良くなっても、恥ずかしく無くなる訳ではない。自分でお尻を弄くるなんて、さすがにかなりの抵抗がある。それでもやらなければならないのだ。
 私は目に涙を溜めながら、クリトリスを弄っていた手を後ろに回した。尻たぶの中に潜り込み、肛門を探り当てる。
 入れる前に念のため、たっぷりと指に付いている愛液を塗り込むようにしてお尻の穴の盛り上がりを捏ねていく。充分に柔らかくなるまで解したいところだったが、また夏姫に何か言われるかも知れないのですぐに切り上げる。
 私はフーッと息を吐きながら中指を肛門に突き入れていった。ズズズッと意外にも直腸は大した苦労もなく根元まで指を丸呑みできた。
 輪姦の時にお尻も犯されたから拡がってしまったのだろうか……。
 手放しでは喜べないが、痛みがしないのは随分と私の気を楽にさせてくれる。
 私は前と後ろの指を同時に動かし始めた。
「はあっ……はああっ……」
 肛門は痛みも快感もないが、膣孔は肉欲の固まりになったかのように劣情が生み出され、ピクリピクリと頻繁に腰が跳ね回った。
 子宮に熱が篭もり、だんだんと快感が高まってきて、お尻の穴までウズウズしてくる。  直腸がキュウッと締まり、抜き差ししている中指に強い圧力が掛かった。力を入れてズブズブと突き込みを続けると、腸の粘膜が蕩けそうなほど疼き始めた。
「うああっ……ひああんっ……」
 見られているのが分かっているのに、はしたなく身悶えしてしまう。
 押し寄せる快感に翻弄され朦朧とする意識の中で、かつてない昂揚感が駆け上がってくるのを感じた。
「はあああんっ! も、もう……もうっ……」
「イッちゃうの? ねえ、春香。私達の見ている前でイッちゃうの? イクならイクって言いなよ」
「ああああっ……イッ、イキますっ! イッちゃいますうぅっ!」
 股間に痺れるような熱い快感が渦巻き、頭が真っ白になる。痙攣するようにブルブル震えて快楽を堪能していると、尿道口から盛大に潮がビュッビュッと噴き出した。透明色の飛沫が飛び出していく感覚がとてつもない性感をもたらし、私は背筋を仰け反らせて口から涎を垂らしながら打ち震えた。
「あ、あああ……。ふああ…………」
 絶頂の余韻にスウッと全身から力が抜けていく。


「あはは。やればできるじゃない。気持ち良かった? ねえねえ、どうなのさ?」
「は、はい。その、気持ち良かった、です……」
 気だるい感覚にボーッとしながら答える。
「じゃあ、私のを舐めさせてあげる。ほら、こっちきな」
 フラフラと夏姫の元へと歩いていくと、彼女に手を掴まれ、私は工場の奥の方へと連れて行かれた。
 どうやら夏姫は、他の人に嬌態を見られるのは嫌らしかった。当たり前か……。私だって、痴態を披露していた間、どれだけ恥ずかしかったことか分からない。
 夏姫は奥にあるソファに腰掛けて、作業着のような白いダボダボの特攻服を下だけ脱ぎ捨てた。上半身にはゴワゴワとした特攻服を着たまま、夏姫の子供っぽい身体つきをした下半身が剥き出しになる。
 彼女がソファに足を乗せてガバッとM字開脚すると、まだ産毛しか生えていない幼い割れ目が露わになった。そこからビラビラした肉は一切はみ出ておらず、股間には綺麗な一本筋がクッキリと通っているだけだ。
 無毛の縦筋はヒクヒクと物欲しそうにわなないて、僅かに愛液が滲み出している。
「ほら、何してんの。早く舐めな」
「は、はい……」
 私はソファの前で膝を着き、背中を丸め夏姫の股間に顔を寄せた。少しだけオシッコの匂いが鼻を突くが、我慢できない程ではない。幼い割れ目から漂っている匂いだと思えば、それほど嫌悪感も沸かない。しかしそれを舐るとなれば、さすがに戸惑いを覚えてしまうが……。
 思い切って私は目の前の縦筋をベロンと舐め上げた。
「あう……」
 夏姫が可愛らしい喘ぎ声を上げた。
 犬のように舌を何度も下から上に滑らせていくと、割れ目がピクピクとヒクついた。
「ん……んんっ……あんん……」
 頭上から聞こえてくる夏姫の幼い声がだんだんと大きくなってくる。こうなると年上のレディース達を顎で扱き使う夏姫も可愛いものだ。
 私はさらに彼女を追い詰めるべく、両手を割れ目の横に添えて、親指でムキッと縦筋を横に広げた。桜色の瑞々しい粘膜が顔を出す。まだ男を知らないかのように鮮やかで綺麗な膣をしていた。
「んはあっ……」
 ひっそりと息づく小さな膣口を舌先で突付くと、夏姫は身体を小刻みにプルプル震わせた。
 舌を尖らせ、ゆっくり潜り込ませていく。ズッと舌先が僅かに入り込むんだところで、夏姫はビクッと反応し、私の額をグイッと押しのけた。
 一瞬、もう終わりでいいのかと思ったが、夏姫が焦った様子で口を開く。
「誰が中まで入れて良いって言ったの!? お前は舐めているだけでいいの!」
「は、はい。すみません……」
 私は訳が分からないまま返事をした。
 もう一度彼女の割れ目に向かって舌を伸ばした時に、ようやく夏姫が焦った理由が分かり納得がいった。おそらく夏姫は、まだ処女なのだ。別に舌を入れたくらいで処女膜がどうにかなることなんてないが、そんなことはあまり関係がない。未通の膣口に異物を入れることそれ自体が恐いのだ。私もつい先日まで処女だったから分かる。
 しかし、そうか……夏姫は処女なのか……。レディースなんかやっている上に可愛い顔をしているから、とっくに経験済みかと思っていた。男の暴走族とも結構打ち解けているようだったし。
 男のペニスを見ても臆してはいないようだったが、彼女は一体どんな気持ちで私を男達に襲わせたのだろうか。ちょっと想像の範囲を超えている。
 私は舌を突き出したまま、ツーッと割れ目を舐め上げていき、秘めやかなクリトリスまで到達するとチュウッと吸い付いた。
「はうっ……」
 予想通り、夏姫は強い刺激に煽られて身悶えし始める。
 クリトリスを舌腹で転がしてやると、夏姫は頭を後ろに反らしてソファの背もたれに体重を預けた。彼女の細い足も脱力するようにフラッと外側に傾いた。ただでさえ開脚していた足が、さらに大きく開かれる。割れ目を横に押し広げていた両手を離しても、限界近くまで足が開脚されているためにピッタリとした一本筋には戻らない。
 私は微かに口を開けている縦筋に人差し指を当てて、優しく撫で上げていった。愛液のヌメリが手伝い、なめらかに指が割れ目を滑っていく。
 何度も上へ下へと指を反復させながら、舌でクリトリスを押しつぶすようにして舐め上げる。
「はあっ……はああっ……ふああっ……」
 夏姫は絶え間なく荒い呼吸を繰り返していた。押し寄せる快感の波に翻弄されているみたいだった。
 フッと見上げると、彼女の顔はほんのりと紅潮していた。快楽の熱で身体が火照っているようだ。
「あ、ああっ……ひあああっ!」
 クリトリスを舌で押してズリズリ動かすと、夏姫は痙攣するように細かく震えて潮を噴いた。ピュピュッと幼い割れ目から可愛らしい飛沫が放たれ、私の頬にピチャピチャと降り掛かった。


 夏姫が衣服を整えるまで、私は全裸のままジッとソファの前で正座をして待っていた。
 特攻服を着直してソファから立ち上がる頃には、夏姫は相手を小馬鹿にするようないつもの笑みを浮かべて私を見下ろしていた。
 私は恐る恐る顔を上げて口を開いた。
「あ、あの、夏姫さん。わ、私の芸と奉仕、気に入って頂けましたか?」
 言われるままにオナニーを披露し、さらには舌で夏姫のアソコを舐め擦ったのは、ひとえに彼女に特別扱いしてもらい、他の奴隷的立場の女達のように売春させられるのを回避するためである。
「ん? んー、どうしよっかなー」
 夏姫が思わせぶりな態度を取っていると、工場の入り口の方で扉の開く音がした。向こうにいるレディース達が「お疲れ様です、秋穂さん!」と挨拶する声が聞こえる。
 ……秋穂? まだ聞いたことのない名前だ。出迎えの仕方からすると幹部らしいが……。
「ああ、アイツが来たのか……」
 夏姫は顔を顰めて鬱陶しそうに言った。
「いくよ、春香」
「あ、はい……」
 私の処遇をどうするのか答えないまま、夏姫は工場の中央に戻っていった。仕方なく私もそれに続く。
 ついさっきまで工場内に十人近くしかいなかったレディースが、秋穂とかいう幹部の帰参と共に倍近い人数になっていた。秋穂とかいう人が引き連れて来たのだろう。その中に、ブレザーの制服姿をしている女の子が一人だけ交じっている。私と同じ様に、哀れにもレディースに絡まれて連れて来られたのだろうか……。
 あのブレザーは、大学付属の中高一貫校の制服だったような気がする。彼女が中等部か高等部かは分からないが、いずれにしても雰囲気からすると私と近い年齢に思える。
 人が増えてもその中で全裸なのは私だけな上に、ブレザーの子がしきりにこっちを見てくるので、なんだか余計に恥ずかしくなってきた。
 陰毛は隠しようもないが、私はせめて上半身だけはと胸を腕で覆った。そうやってレディースの集まりから距離を取っていると、ブレザーの女の子がレディースの群れから離れてこっちへ近づいて来た。
 一人だけ浮いている私に同属意識を感じ取って助けを求めるつもりなのかと身構えていると、彼女は落ち着き払った声で私に話し掛けてきた。
「貴方が新人の春香さん?」
「あ、は、はい……」
 思わず反射的に答えてしまう。
 カラフルで訳の分からない髪型が多いレディースの中で、彼女は黒髪のショートカットという異質な姿をしていた。それだけに戸惑いを覚えてしまう。どうやら連行されて来た被害者ではないらしいこの子に、どう接すればいいか分からないのだ。
「ちょっと、秋穂。春香は私が連れてきたんだからね。舎弟にしたかたったら、私の許可を取りなよ」
 夏姫がそう言ったので、私は秋穂という人が誰なのかとキョロキョロした。
 何故か目の前のブレザーを着た女の子が夏姫の方を向いて口を開く。
「別に、舎弟にするつもりなんてないわ。ただ挨拶しただけよ」
「ふうん。それならいいけど」
「まあでも、可愛い顔してるわね、春香さんは。それに真面目で大人しそうだから、私の好みではあるわ」
「ほらやっぱり。アンタはすぐそうやって生ぬるいことを言う。奴隷に甘いんだよ」
「そうかも知れないわね」
 ブレザーの女の子は、整った顔に上品な笑みを浮かべ、手を口元に当ててクスリと笑った。一挙一動から理知的な雰囲気が漂っている。もっとも、この場に似つかわしくない大学付属学園の制服を着ているせいで、なんとなくそう見えてしまうのかも知れないが。
 いや、それより驚いたことに、ブレザーの女の子は夏姫と対等に話をしていた。今までそんなことをしているのはあの恐ろしい特攻隊長くらいしか見たことがない。
 総長の妹で幹部でもある夏姫とタメ口を利けるのは、同じ階級の幹部だけのはずだ。幹部は四人しかいないので、総長と夏姫の姉妹を除けば、あとは特攻隊長と秋穂とかいう人だけのはずで……。
「改めまして。宜しくね、春香さん。秋穂です。貴方の情報は一通り把握してあるわ。貴方とは同い年だけど、私は一応幹部ってことになってるからそれなりの口の利き方を、ね。私は別にどっちでもいいんだけど、周りが五月蝿いから貴方のためよ」
 秋穂と名乗ったブレザー姿の女の子が私に向かってニッコリと微笑んだ。
「ばーか。『しきたり』なんだから当たり前だろ」
 夏姫が呆れたような顔をして横槍を入れる。その声色からすると、秋穂さんの言動にいつも不快な思いをさせられているといった感じがする。
 しかし、どうなんだろう。夏姫も昨日、特攻隊長に『しきたり』を守れとかなんとか言われていたような気がするが……。つまり秋穂さんは、その夏姫をして目に余るほど『しきたり』を軽視しているということか。
 確かに彼女を見ればそれは一目瞭然だった。何しろ、夏姫を含めた他のレディース達が物々しい特攻服に身を包んでいるというのに、彼女だけが学校の制服を着たままなのだから、そのマイペースさというか空気の読めなさというか、そういう我意の強さは夏姫の比ではないだろう。
「春香さん、もう服を着てもいいわよ」
 秋穂さんが言った。
「え……?」
 突然のことに思わず聞き返してしまう。
 これで相手が夏姫だったら、「同じことを二回言わせるな!」とか罵られながらビンタされてもおかしくはないが、秋穂さんは優しい笑みを浮かべたまま私に言った。
「今日から新しい奴隷が入るから、貴方はもう序列最下位の新人奴隷ではなくなるのよ。だから、服を着てもいいわ。特攻服はまだないから、とりあえずここに来るのに着てきた服を着ていいわよ」
「……あ、はいっ」
 思わぬ幸運に内心歓喜しながら、私はそそくさと工場の入り口辺りに行って、カバンの上に置いておいたセーラー服を着込んだ。下着は夏姫に取られてしまったのでスカートの中がスースーするが、裸体を隠していられることによる安堵感には感動すら覚えてしまいそうだった。


 そういえば、新しい奴隷は誰なんだろう。哀れな被害者だと思っていたブレザーの少女は大幹部の秋穂さんだったし、あとは特攻服に身を包んだレディースしかいないように思えたけれど、まだこの場にはいないのだろうか。
 レディース達が溜まっている工場の中央まで戻ると、特攻服を着ている彼女達の中で、一人だけ囲まれるようにして立っている女の人がいた。髪を茶髪にして気が強そうなツリ目をしている彼女は、目に涙を溜めて若干震えているようだった。それでも囲んでいるレディース達を気丈に睨み付けているが、どう見てもそれが強がりだと分かってしまうので余計に哀れに思えてくる。
 何が何だか分からずにその光景を遠巻きに見ていると、後ろから夏姫が抱きついてきた。鬱陶しいので振り払ってしまいたかったが、なんとかそれは我慢する。
「春香ー。よかったねえ、最下層から脱出できてさ。そのセーラー服姿は可愛いから、私も嬉しいよ。普通は数ヶ月は全裸のまま新人奴隷なんだけどね」
 どうやら私は相当に運が良いらしかった。
「まあでも、そのうち特攻服もちゃんと作らなきゃねえ。いつまでも秋穂みたいな半端な格好じゃあ駄目だからね」
 肩に顔を寄せて喋る夏姫の口から、甘い口臭が私の顔に吹き掛けられる。さして不快ではないが、夏姫と仲の良い姉妹のようなスキンシップをする気にはさすがになれない。
 どうやら、さっきのクンニのせいで夏姫は私に心を開いてしまったようだった。
「まさか春香、秋穂の舎弟になりたいなんて言い出さないよね? 私の舎弟になりたいって言ってたよね?」
「え、えっと……」
 何とか適当に誤魔化しておきたかったが、上手い言葉が浮かんでこなかった。
 誰だって、情緒不安定で年下の夏姫よりも、優しい同年代の秋穂さんの方に付きたいと思うだろう。ましてや夏姫は、私をこの恐ろしい世界に引き摺り込んだ張本人なのだ。
 とはいえ、秋穂さんが拾ってくれる見通しはまだ全然立っていない。ここは夏姫をキープちゃんとして確保しておきたいところだ。
「春香は騙されてるよ。秋穂はそりゃあ、奴隷には優しいかも知れないけどさ、本当はうちのレディースの中で誰よりも冷酷だから」
「冷酷……? とてもそうは見えませんが……」
「だから、奴隷には優しいだけだってば。なにしろアイツは、元々奴隷だったんだからね」
「あ、秋穂さんがですか?」
 意外な言葉に、私は思わず夏姫と間近で顔を付き合わせた。
 夏姫は私の目を見て得意げに頷いて見せる。
「そう。最初は春香みたいに、泣き叫びながら犯されてたよ」
「…………」
「だけど、三日後にはいつのまにか姉貴に取り入っていて、奴隷から兵隊に格上げされちゃったんだよ。兵隊に昇進っていうのは、自分からレディースに志願してきたヤンキーと同格ってことなんだけどさ。ここまでは、まあ三日という最短記録を除けば有り得ない昇格でもないし、誰もそんなに気にしていなかったんだけどね」
「は、はあ……」
 幹部に取り入って売春を回避するのは私も考えていたが、さすがに兵隊クラスになれるのは難しいと思っていた。いや、正直言って、まだそんな発想すらなかっと言ってもいい。
 私がひたすら売春を恐れていた時間を、秋穂さんはより有効に使ってその先を見ていたということだろうか。だとしたら格が違うと言わざるを得ない。
「秋穂が兵隊になってから、すぐに何人かの新参の兵隊とグループを組んで、対立しているレディースから何人も兵隊を拉致って暴行し出したの。秋穂のアレは暴行というより拷問と言ったほうがいいかもね。最初は強がってた拉致られた兵隊達も、例外なく一時間後には秋穂に屈服するか引退するかのどちらかを選んでいたくらいだから」
「…………」
 あの優しそうな秋穂さんがそんなことをするなんて、俄かには信じがたい話だった。
「うちのレディースが最近になって大きくなっているのは、姉貴や特攻隊長が馬鹿みたいに強いってことが一番の理由だけど、秋穂が敵対組織のレディースを拉致りまくって手駒を増やしていったのも大きな要因だってことは認めざるを得ないわね。事実、その功績が認められて幹部入りしたんだし。奴隷から幹部にまで上り詰めるなんて、そこら中のレディースを調べても前例がないはず」
「秋穂さんはそんなにも喧嘩が強いんですか?」
「強くはないわ。いかにもお嬢様な外見を見れば分かるでしょう。むしろ弱い。強くないからこそ、あそこまで出来るアイツは余計に異質なんじゃないの」
「は、はあ……」
「あんまり信じてないって顔ねえ……」
「いえっ。いえいえっ」
 私はブンブンと顔を横に振った。実際、「嘘つくなホラ吹き娘が」としか思っていないが、それを悟られて不機嫌になられては困る。
「まあいいわ。これから秋穂の本性が見られるから、もっと近くに行こうか。特等席で見物しよう」
 私にしだれかかっていた夏姫が身体を起こし、ズンズンとレディース達を掻き分けて、輪の中心にある二人掛けのソファに座った。
「春香っ。何してんの、こっち来なっ」
 私は「すいませんすいません」と謝りながら夏姫の作ったレディース達の隙間をスリ抜けた。
「ほら、ここっ」
 夏姫がバンバンと二人掛けのソファの空席を叩く。
「は、はい」
 私は恐る恐るソファに腰を下ろした。
 視線を上げると、レディースに囲まれて緊張した顔をしている女の人が視界に入った。
 そしてその目の前には、笑みの消えた秋穂さんがジッと獲物を見定めている。
「秋穂は奴隷には優しいけど、自分からこの世界に入った女には全っ然容赦しないから」
 隣に座っている夏姫が、近くに立っている秋穂さんには聞こえないよう私に耳打ちしてくる。
「秋穂の前でブルってるあの女は、うちに降伏してきたレディースの総長だった奴だよ。これから対立していた頃の『ケジメ』を付けさせるってわけ。今は必死に強がってるけど、あれじゃあすぐに泣き叫び出しそうだね。秋穂の責めはキッツイからねえ」
 夏姫は可愛らしい声でクスクスと楽しそうに笑った。


 それから私は、目の前で繰り広げられる地獄絵図を見て、秋穂さんの冷酷さを嫌というほど思い知らされることになるのだった。



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