第二話・クルル

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「もう! なんなのよ!」
 狭いテント内を早足で歩き回りながらアンジェリカは声を荒げた。百人隊長たちが退席した途端にこの有様だった。高潔な姫君としての気品はすっかり消え失せている。
「あいつら、完っ全に私を侮ってるわね! お姫様だから? 女だから? こっちが気を遣って下手に出てたら、調子に乗って忠告までしてくれちゃってさ! 舐めるのも大概にしなさいよね! いい加減にして欲しいわよ、まったくもう!」
「落ち着いてください、姫様」
 テント内には、アンジェリカ姫の他にもう一人の少女がいた。名はクルル。アンジェリカが軍に入る前は侍女として遣えていた。今は副官として随行している。
「そんなに苛々しても仕方ないじゃないですか、姫様。これまでのように、実力で見返せばいいんです」
「それくらい、言われなくても分かってるけどさ……」
 王女は唇を尖らせた。人前ではお姫様らしい淑やかな言動を決して崩さないアンジェリカだが、クルルの前でだけは素直な自分を曝け出す。それは信頼の証だった。
 クルルはまだ16歳で、彼女が親愛の情を寄せている小さな千人隊長よりも、さらに一回り小柄な体躯をしていた。
 下ろしても肩に掛かるくらいしかない短い後ろ髪を、無理やり紐でひとつにくくっている。この方が可愛い、という姫の一言によって、それからのクルルは、後頭部にまとめた髪をちょこんと垂らしているのだった。
 鏡で自分の姿を見てみると、確かに可愛いとは思った。澄ましていれば聡明な王女に見えるアンジェリカ姫とは違い、クルルの目鼻立ちは、未だ発展途上にすら入っていない子供のそれである。そのせいか、妙にポニーテールが似合っている。
 クルルは、王族どころか貴族ですらなかった。平民である。本来ならば王女には近付くことすらできない身分だが、城を抜け出してひとりで遊び回っていたアンジェリカと出会ってから、クルルの人生は大きく変わった。お姫様の初めての友達となったクルルは、侍女見習いとして城に出入りできるようになった。あれから七年。今もこうしてクルルはアンジェリカの側にいる。
 アンジェリカのわがままには慣れていた。いつものことだ。髪型を弄られるくらいなら可愛いものだが、しかし時には文句を言いたくなることもあった。そういう時、クルルは遠慮なく口うるさいことを言う。
 今がまさにその時だった。
「姫様」
「ん? なによ?」
「私、出陣前に盗賊団は千人ほどいると報告しましたよね?」
「うん、したわね。さっき斥候が知らせてきた数とぴったり一致してた。出陣する前からそこまで掴んでいるなんて、相変わらずクルルの仕事は正確無比ね。感心するわ」
「なのに、どうして百人隊長の方々は先ほど驚いていたのでしょう? もしやと思いますが、情報を下ろしていなかったのですか?」
「失礼ね。そんなはずないでしょう? いくらなんでも、そこまで馬鹿なことなんてしないわ。何も伝えなかったら、部下がついてこないじゃない。誰だって情報を欲しがるものよ。少しでも多くの情報を下ろすのは上官の責務だしね。……まあでも、千人って馬鹿正直に言ったら、多分、私の千人隊だけじゃ出撃させてもらえなかったでしょ? それじゃあ手柄を独り占めできないじゃない? だから、えっと、ちょっとだけ過少気味に伝えちゃったけれど」
 後頭部に手をやって金髪を揺らしながら、アンジェリカは舌を見せた。とても可愛らしかった。
「ちょっとだけ過少気味、と言いますと? 百人隊長の方々にはどのように伝えていたのですか? 具体的に教えて頂けますか?」
「うん? 具体的に?」
「はい」
「えっと、まあ、五百人くらいかな」
「半分にしちゃってるじゃないですか……」
 クルルは頭を抱えた。隊長たちが尻込みするわけだ。いかに相手が盗賊だとはいえ、敵の兵数が実は倍だっただなんて言われたら、誰でも先行きに不安を感じるだろう。
「大丈夫よ。出陣前ならともかく、ここまで来ちゃったら、いくら嫌でもサボタージュを決め込むわけにはいかないでしょ。何しろ敵は目の前なんだからね」
 アンジェリカに悪びれた様子は微塵も見られなかった。
「全部 計算済みなんですね……」
「そ。どうせ勝つんだし、問題ないでしょ?」
「大ありです」
 クルルは静かに言った。
「なんか、クルルったら、割と本気で怒ってるみたいね」
「当然です。そういうことを考えてたのなら、私にだけは事前に相談してくれたっていいじゃないですか」
「ふぅん」
「なんです?」
 訪ねるとアンジェリカは可笑しそうに目を細めた。
「怒ってるというより、拗ねてるって表現した方が近いみたいね」
「…………」
 図星を指されて言葉に詰まる。
「や、クルルには言っておこうかなぁとも思ったんだけどね、そうすると反対されそうな気がしてたから、言い出しにくくってさ」
「まあ、確かに反対していたと思いますけれど」
 楽観論に傾きやすいアンジェリカに比べ、クルルは慎重な意見を持つことが多い。アンジェリカが積極策を提案し、クルルが諌める。今までほとんどそのパターンだ。  もっとも、今回の場合は楽観とか慎重とかそんな次元の問題ではない、とクルルは思うのだが、だからこそアンジェリカはこのことを内密にしていたのだろう。
「クルルに黙っていたのは悪かったわ。謝る。ごめん。でもさ」アンジェリカは一転して真面目な表情になった。「私には一つでも多くの功績が必要なのよ。分かっているでしょう?」
「それは、はい」
 クルルも殊勝に頷いた。

 ここアールストレイム王国は、現国王が病に倒れてから荒廃の一途を辿っていた。実権を握っているのは、国王の長子オイゲン=アールストレイム、すなわちアンジェリカの兄である。
 オイゲン王子は救いようのない無能だった。一時期などは、妹のアンジェリカと王位継承権権順位を逆転させるべきではないか、という話まで持ち上がるほどであった。通常、王位は長男が継ぐことになっている。このような話が出てくるというだけでもオイゲン王子の無能さが分かろうというものである。
 直後に現国王が床に臥せってしまい、宮廷が混乱に陥ったため、その話は立ち消えになったのだが、一連の流れからひとつの疑惑が宮廷内で囁かれた。オイゲン王子は自身の地位を守るために恐れ多くも国王陛下に毒を盛ったのだ、と。
 所詮は根拠のない噂でしかなく、国王もほとんど意識のない状態が続いているため、オイゲンに処罰を下せる者は誰もいなかった。しかし以後のオイゲンの振る舞いは、宮中の噂を補強するに足るものであった。
 国王に代わり政務を取り仕切ることになったオイゲンは、国王に近しい重臣を排斥していった。彼らの後釜には自分に媚びへつらう者を据えた。王子に対してしつこく進言する者はいなくなり、オイゲンによる独裁体制が始まった。自他共に認める無能のオイゲンだが、権力欲だけは人並み以上に有していたのである。
 王子は節制という言葉を知らなかった。莫大な予算を使い込んで贅沢の限りを尽くしたところで、彼は何の痛切も感じなかった。オイゲンの側近はそれを諌めるどころか、少しでもおこぼれに与ろうとすることしか考えなかった。
 こんなことがあった。
 絵画に興味を持ち始めたオイゲンは、王都の中心部に巨大な美術館を作らせた。膨大な資金を注ぎ込み、王宮に引けを取らぬほどの内装まで施した。しかし長年を掛けて建造が終わった頃には、彼の絵画への熱はすっかり失われていた。オイゲンは気のない声で、完成したばかりの美術館を取り壊すよう命じた。
 後日、再び絵画に関心を寄せたオイゲンは、美術館をそっくりそのまま再建させた。国中から強制的に奴隷を調達し、前回の半分の工期で建設させたが、飽き性のオイゲンは完成前にまたしても他のことに興味を移してしまった。  さすがに今度は取り崩すようにとは言わなかった。いずれ絵画への好奇心を取り戻した時に訪れるためである。それまで美術館が開かれることはない。最初の訪問者はオイゲンでなければならないからだ。それは誰が言い出すまでもなく決定していることだった。  しかし、結局その時は訪れなかった。オイゲンは現在に至るまで絵画に関心を持ち直すことはなく、したがって完成後の美術館は現在も閉鎖中のままである。
 国内各地で同じような愚行が繰り返し行われた。
 中でも国民の怒りを買ったのは治水工事であろう。珍しく張り切って治水対策の陣頭指揮を執っていたオイゲンだったが、それも一時の気紛れに過ぎなかった。治水工事が予想以上に困難であることが分かると、あっさり投げ出してしまったのである。
 それだけならばまだ良かった。後任者が適切な工事を進めれば済む話だ。だがオイゲンは、自分の進めた計画を他の者に任せるのが癪に触り、工事そのものを中断してしまった。
 洪水の報告書や工事再開の嘆願書がいくつも王宮に届いたが、面倒なことは全て側近に任せているオイゲンがそれを目にすることはなかった。治水工事そのものが彼の記憶に留まっているのかも怪しいところである。
 オイゲンの家臣団も、主の逆鱗に触れることを恐れて嘆願書を黙殺した。そのせいで危険な氾濫源が未だ野放しになっている。昨年に洪水が起こり、多数の死者が出たが、治水工事が再開されることはなかった。
 昔から女好きとして知られていたオイゲンは、その方面においても金と権力を存分に生かし、欲望のままに動いた。特に高貴な血筋の処女を好み、容姿端麗な貴族令嬢を後宮に入れるためには、多大な保証金を支払うことにも躊躇がなかった。
 財源が尽きてもオイゲンは散財を続けた。不足分は平民への増税で補われた。
 アールストレイム王国の庶民は、もともと楽な暮らしをしていたわけではない。そこへきての度重なる大増税。食べていけるかどうかという生活をしている農民も、多くの収穫物を奪われた。
 オイゲンが王国の中枢を掌握してからは、凶作の年でもないのに大規模な飢饉が頻発するようになった。
 これほど国力を疲弊させていれば、とうに周辺国から攻め込まれていてもおかしくないところだが、外交政策は極めて上手くいっていた。
 それはもちろんオイゲンの功績ではない。病床についている現国王が、過去に腐心して平和の礎を作り上げてきたおかげであった。皮肉にもそれがオイゲンを守り、国民を重税の苦しみに縛り付けることになった。
 王国が内部から崩れるという可能性もゼロではなかったが、権力の中枢から退けられたかつての重臣たちは、放逐された地方の各地でその能力を発揮し、反乱の芽を摘み取っていった。むろんそれは彼らの望むところではない。地方で責任のある立場にいるために仕方なく行っていることであり、彼らに非があるとは言えないのだが、結果として独裁体制の存続に多大な貢献をしていた。
 現状を打破するには大きな力が必要だった。国内各地に散っている反オイゲン派をひとつにまとめることのできる、大きな力が。

 アンジェリカはクルルに向かって言った。
「お兄様にこの国を任せてはおけないわ。私が立ち上がらなくてはいけないの」
 アンジェリカの瞳には強い意思が宿っていた。兄の悪政に対して義憤を抱いているというのもあるだろうが、彼女が軍に入った理由は決してそれだけではないだろう。クルルはそう見ている。
 アンジェリカは自身の才覚を発揮したいと考えており、それが可能な場を常に探してきた。兄の影響が薄く、功績をはっきりと示すことができ、独立勢力を築きやすい場。辿り着いた先が軍だった。
 アンジェリカは幼い頃から英才教育を受けてきたが、その知識は政略方面に偏っており、軍事に関しては素人同然と言えた。しかし軍に入ってからの成長は目覚しく、2年ほど様々な部隊を渡り歩いた後、百人隊長に任じられるとすぐさま手柄を立てた。アンジェリカの活躍を間近で見てきたクルルは、その過程で彼女の能力に全幅の信頼を寄せるようになった。
「クルル、あなたも同じ想いでしょう。お兄様を打倒できるのは私しかいないのよ」
 自信に満ち溢れた大きな瞳が、真っ直ぐにクルルを見つめている。
「ええ。姫様ならきっとできると思います」
 それはクルルの本心だった。だが他の者が同じように賛意を示してくれるとは限らないだろう、とも思う。
 血筋から考えれば、アンジェリカ姫ほど反抗の象徴に相応しい存在はないだろう。
 病に臥しているとはいえ、現国王は未だ存命だ。実質的にはともかく、形式上はオイゲンが王位に就いている訳ではない。現国王は今もって国民から信望を寄せられているため、国の中枢をオイゲンが牛耳っているからといって王制そのものに反旗を翻しても、下の者がついてこない。
 であるならば、オイゲン個人に対象を絞って追い落とすしかない。そこでアンジェリカ姫が先頭に立てば、理想的な大義名分が生まれるのだ。
 兄の専横を許せず妹が立ち上がる。すなわち、王国への反乱ではなく、後継者争い。これなら現国王の名望が反オイゲン派に不利に働くことはない。立ち回り次第では、オイゲンが掌握している王都の正規軍すら味方に付けることができるかもしれない。
 しかしクルルには懸念があった。アンジェリカの年齢である。17歳。各地の軍司令官を糾合するには、いくらなんでも若すぎる。仮に反抗勢力をまとめ上げられたとしても、何の実権もないお飾りの盟主になりはしないか。その危機感は常に持っておかねばならないだろう。
 他にも不安要素を挙げていけばきりがない。
 だからこそ、とクルルは思う。確かに姫様の言うとおり、多少の危険を冒してでも、功績を手にする機会を作るべきであるかもしれない。
「とはいえ、どんな理由があっても、私にはなるべく嘘をつかないでください。なんだか寂しくなっちゃいますから」
「うん。ごめんね?」
「いいですよ、もう」
 やれやれと言わんばかりにクルルは肩をすくめた。それがせめてもの意思表示だ。素直に謝られてはこれ以上怒る気になれない。今度このようなことがなければいいけど、と思いつつ、それは無理な話だろうな、とも思うクルルだった。
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