第一話・アンジェリカ

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 山間を春風が押し通り、木々をざわめかせ、草原を薙いでいく。
 風の影響を受けているのは草木に限ったことではなかった。山岳に囲まれた平原地帯。そこに布陣している千人から成る軍勢が、みな一様に腕で顔を覆い、目を細めていた。風が去ると彼らは次々と前方へ向き直った。

 軍勢の前方には盗賊集団の本拠地があった。国内でも最大規模を誇る大盗賊団である。千人の将兵は、これから盗賊たちを相手に戦いを挑まねばならなかった。
 並んでいる兵士たちの顔には、例外なく緊張の色が浮かんでいた。今の状態があるいは一番辛いのかもしれない。戦闘が始まれば余計なことを考えている暇などないが、上官からの命令を待って立ち尽くしている間は、嫌でも様々なことを考えてしまう。
 敵味方の数。自軍の勝敗。指揮官の能力。すべてが彼らの生死に関わってくるのである。中でも将兵がもっとも心配しているのは、指揮官の能力だった。
 目前の盗賊団より数で勝っていたとしても、自軍の指揮官が無能ならば、敗北の可能性は決して低くない。それだけならまだいい。たとえ戦に負けたとしても、故郷に帰ることができるのなら、最悪の結果ではない。だが指揮官が無能だとどうなるか。戦に負けるだけでなく、敗走中に何度も追撃を受けることにもなる。秩序立った撤退が行えなければ必然の結果だ。そうなれば目も当てられない惨状が待っている。
 個々の兵士にとって、自分の生命以上に大事なものなど存在しない。そしてそれを守ってくれるのが指揮官なのだ。
 現在、彼ら兵士たちを率いるのは、着任したばかりの千人隊長だった。数回に渡る隣国との会戦で、何度も戦果を上げ、とんとん拍子に出世してきた人物だが、その力は果たして本物かどうか。
 実績だけで評価はできない。指揮官の中には、大した能力もないくせに運良く功績を残して出世する者がいる。幸運など長くは続かないもので、いつかは痛い目に遭うのだが、その場合、真っ先に被害を受けるのは最前線の兵士たちだ。
 ゆえに、兵士たちは戦う前から上官の能力を見極めたがる。末端の兵には知りようもないことではあるが、だからこそ思いを巡らせてしまうのである。
 彼らが千人隊長の力量を疑うのには一つの理由があった。
 それは、聞けば誰もが頷くほど至極もっともな話ではあったが、人前で口にするには憚られる内容であった。

 軍勢の中心には大きな天幕が設営されていた。
 中では千人隊の幹部が集まり軍議を開いている。
 地べたに百人隊長たちが座り込み、彼らを統率する立場にある千人隊長に顔を向けていた。
 千人隊長は、戦場に似付かわしくない豪華な椅子に腰を下ろしていた。大げさな装飾が施されたその椅子は、玉座のように重々しい威厳を放っている。
 遠く離れた宮廷からその椅子を持ち出してくるのに、いったい何人の兵を割くことになったのか。本来ならそう文句を言ってやりたいところだったが、百人隊長たちは一言も触れることなく、冷たい土に尻を置いていた。
 軍人としての序列から考えれば、彼らが非難の声を上げないのも当然のことではあるが、なにもそればかりのために黙認しているわけではなかった。上官とはいえ、千人隊長程度に絶対的な権限はない。いくら不興を買おうとも首を刎ねられることはなく、百人隊長の任を外されることもない。王国の正規軍内部では、古株の部下が直属の上官を叱咤することなど珍しくはなかった。
 しかし、肩を並べている歴戦の百人隊長たちといえど、今回ばかりはそう軽々と苦言を呈するわけにはいかない。
 相手は王族。それも、第二王位継承権を持つ直系の血筋だった。
「では、これからの方針を説明いたします」
 千人隊長は、周囲の顔を流れるように見渡してから、ゆったりとした口調で切り出した。少女特有の高い声でありながら、聞き間違えようのない明瞭とした発音だった。
 少女。千人の兵士の命を預かり、国内最大の盗賊団を壊滅しようとしている新任の隊長は、まだ身体も成長し切っていない小柄な少女でしかなかった。
 アンジェリカ=アールストレイム。王女として生まれてきたというのに、危険と隣り合わせの軍に自ら望んで入った、変り種のお姫様。今年で17歳になる。無骨な百人隊長たちとは、少なくとも一回りは歳が離れていた。
 百人隊長の中には、彼女と同年代の娘を持つ者もいるであろう。もっとも、近いのは年齢だけで、容貌には隔絶の差が存在しているだろうが。
 くりくりとした大きな瞳と、流れるように美麗な金髪。なるほどこのお方が王女かと、誰もが即座に納得するような美貌だった。
 大人の魅力を備え始めたばかりで、まだ幼さの残る可愛らしい面持ちをしているが、あと数年ほど年を重ねれば、色気が増してさぞ美しくなるだろう。不敬に当たってもおかしくないほどの下種な想像だと分かっていても、王女の愛くるしい顔を初めて見た者は、例外なくそのような期待をしてしまう。
 アンジェリカ姫の衣服は、彼女が座っている煌びやかな椅子にも負けないほど華やかで美しかった。百人隊長たちの着ている甲冑と見比べるまでもなく、誰がどう判断しても軍人としては不適切な姿である。
 もっとも、この清楚で気品溢れるお姫様が、ドレスを脱いで粗野な鎧を身に付けたところで、背伸びをした子供のように不恰好となってしまうだろう。幾重にも装飾を重ねた衣装の上からでも、王女が華奢な身体をしているのは明らかだった。
 末端の兵士たちがアンジェリカを指揮官として信頼できないのも無理はない。着任したばかりの指揮官は、ただでさえ下から厳しい目で見られるものである。だというのに、やってきたのが、王宮でお茶を飲んでいるはずの王女様では、信頼以前の問題であろう。しかも、お姫様然としたドレス姿のまま戦場に出てきたのだ。これでは不信を抱かれても文句は言えまい。
 そのことをアンジェリカ姫がどこまで認識しているのか、百人隊長たちは測りかねていた。

 幼さを残した少女の声がテント内に通る。
「斥候からの報告によりますと、確認できた盗賊団の数はおよそ一千。事前の調査よりも少しばかり数が多いようですが、相手はしょせん盗賊。我々正規軍の敵ではありませんわ」
 一千。自軍と同等の数を聞いて百人隊長たちはざわめいた。
「どうかなさいました? 何か問題でも?」
 澄ました顔でアンジェリカ姫は百人隊長たちを見下ろした。最初から彼らの反応を見越していたかのような態度だ。
「ひとつ、よろしいですか」
 最先任の百人隊長アンドレアス=ダールトンが、隣の列席者と短く言葉を交わしてから立ち上がった。
 その動作は殊更に緩慢としていた。慎重な発言を期そうとしてのことである。何しろ上座にいるのは第二王位継承者なのだ。不用意な言動が許される相手ではない。
 しかしそれでも、黙ってはいられない時がある。
 少なくともダールトンは、テント内で真っ先に進言をするに見合う立場ではあった。その点に関しては、他の百人隊長など及ぶべくもない。年齢や軍人生活の長さを指しての話だけではない。同格の隊長同士の発言権は、戦場で勝ち得た身内からの信頼が一番に物を言うのだ。
 本来なら、ダールトンの手には両手に余るほどの勲章があって然るべきだった。それほどの功績がある。だが彼は勲章など一つとして持っていない。軍における現在の地位も、実績や実力から考えると不遇を極めている。
 その理由はダールトンの出自にあった。移民の子。それだけでも軍上層部から忌避されるには充分だった。武勇に優れていたため、ダールトンはすぐに頭角を現して百人隊長に昇進したが、それが最後の出世になった。30歳の時の話である。60歳になった今でもその地位は変わらなかった。
 周りの者は口々に言う。ダールトン隊長ならば、王国軍の総大将ですら務まるのではないか、と。
 百人隊長と総大将では必要とされる能力の種類が違います。ダールトンはいつも決まって苦笑しながらそう返す。では自信がないのかと問われれば、また別の話になるのだが。
 直立したダールトンは、発展途上のお姫様をまっすぐに見つめた。
 自分が絶対に就くことのできない百人隊長の地位に、こんな小さな子供があっさりと着任してきたという現実を前にして、ダールトンは複雑な心境に陥らざるを得なかった。
「何でしょうか、ダールトン隊長」
 アンジェリカは椅子に背を預けたまま、透き通るような瞳をダールトンに向けた。それからほんの僅かに小首を傾げて、話を促すように微笑を浮かべる。
 社交界ではさぞ貴族の男たちに持て囃されていたであろうと思わせるような、優雅で洗練された笑みだった。
「恐れながら、申し上げます」若干の気後れを感じながらダールトンは切り出した。「烏合の衆が相手とはいえ、一千という数は侮れません。慎重にも慎重を期した対応が必要であるかと存じます」
 ダールトンが言い終えると、王女の流麗な睫毛が何度か揺れた。
「慎重、ですか? つまりダールトン隊長は、このまま何もしないで撤退するべきだと仰るのですか?」
「そうは申しません。しかし、それも選択の一つではありましょう。あるいは王都に援軍を求めるという手もございます。いずれにしろ、我らはアンジェリカ様のご命令に従います」
 実際には援軍など求めてもいつ来るかは分からず、現実的な案ではなかった。暗に退却を勧めているのだ。王女が自分の考えで結論を出した、ということにしておくためである。
 目の前のお姫様がどのような性格をしているのかわからないため、こうして予防線を張っておく必要があった。
 長い軍隊経験の中でダールトンは様々な上官に出会ってきたが、部下からの進言を絶対に受け入れようとしない者は少なくなかった。大抵の場合、はっきりと言葉にして忠告すれば逆効果になる。
 特に、上級貴族という生き物の扱いには気を配らねばならなかった。普段は余裕たっぷりの態度を取っていても、いざ自分の意見を否定されると、途端に不機嫌になるのである。それが、特権階級のさらに上部に属する者たちにおおよそ共通する特徴だった。
 とはいえ、軍隊経験の長いダールトンといえども、さすがに王族、しかもこのような少女を上官に持ったことはない。そのため、お姫様の反応を読み切れないところがあった。
 ダールトンは直立したまま王女の様子を窺った。言葉を濁したはいいが、さてお姫様はどう出るか。
「そうですわね。兵数に差がないとなると、あるいは苦戦するかも知れません」一呼吸置いてからアンジェリカは言葉を続けた。「ですけれど、私を支えてくれる百人隊長の方々は、みな歴戦の勇士でいらっしゃいましょう? 負けることはない、と私は思いますわ」
「…………」
 王女に撤退の意思がないことを悟り、ダールトンは溜息をつきたい欲求に駆られた。まさか本当に不満を露わにするわけにはいかず、なんとか堪える。
「ならばせめて、アンジェリカ様には後方で我らの指揮を執っていただきたく思います。相当な乱戦になることも予想されますので、どうか御自身の安全を」
「無用な心配ですわ。私も軍人ですもの。危険なのは最初から承知しております。私だけ後ろに下がれば兵の士気に悪影響が出ますし、剣を持って戦う皆様に申し訳ありませんわ」
「いや、しかし」
「私も戦わせてくださいな。むろん、剣ではなく陣頭指揮によってですけれど」
「…………」
 沈黙していると、愛らしい美少女は眉を下げて困り顔になった。
「私を信頼できないのも無理はありませんわ。ですが、指揮官としての責務を放棄するわけにはいきませんの」
「い、いえ、信頼していないなどということは……。分かりました、アンジェリカ様がそこまで仰るのでしたら、我らに異論などあろうはずもございません」
 言いながらダールトンは立ち眩みを覚えていた。
 王女の戦死。想定している中でも最悪のケース。それが現実的に有り得る確率にまで上がってしまった。
 指揮官が死ねば部隊が崩壊するのは必定だが、懸念はそれだけではない。
 自分たちだけ生きて王都に帰ることができたとしても、百人隊の主だった士官は、第二王位継承者を死なせてしまった責任を必ず問われることになるだろう。もちろんダールトンも含まれる。死罪は間違いない。ひょっとしたら、家族にも害が及ぶかも知れない。考えれば考えるほど気が重くなるような状況だった。
 ……しかし、それにしても。
 ダールトンは内心で肩を落とす一方、落ち着き払った王女の声色に感心してもいた。数多の戦場を駆けてきた自分ですら、数的優位のない状態で盗賊とぶつかることになると聞いた時は、驚きを隠せなかったというのに。
 彼女が冷静なのは、戦いの恐ろしさというものを知らぬ蒙昧さゆえなのだろうか?
 あるいは……?
「では、準備が整い次第、総攻撃を開始します。ダールトン隊長、よろしいですね?」
「かしこまりました」
 胸中に様々な思いを抱きながら、ダールトンは深々と頭を下げた。
 議論はそこで終わりとなり、いくつかの確認事項を消化すると、百人隊長たちは重い足取りでテントから出て行った。
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